映画感想を中心とした管理人の戯言です。
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【20-063】朝が来る ★★★★★
category: 2020年の映画レビュー | author: moeru-movie
それほど「観たい!」と強く思ってた訳では無かったが、朝が来るを観てみた。

子供に恵まれなかった栗原佐都子(永作)と夫の清和(井浦)は、特別養子縁組の制度を通じて男児を家族に迎える。
それから6年、朝斗と名付けた息子の成長を見守る夫妻は平穏な毎日を過ごしていた。
ある日、朝斗の生みの母親で片倉ひかりと名乗る女性(蒔田)から「子供を返してほしい」という電話がかかってくる。


まだまだ日本では浸透率が低く、何かと偏見の目で見られる事も少なくない「養子」をテーマにした作品です。
確かに、日本では「お腹を痛めて産んだ子」こそ本当の親子と言う見方が強く、代理出産や養子縁組はどこか差別される風潮がありそうです。
そんなテーマは自分とは全く程遠いものではありますが、そんな自分が観ても、この映画は刺さりました。泣けました。とても良かったです。今年の邦画BEST最有力候補です。

物語の前半は「育ての親」となる永作博美と井浦新夫妻の話で進みます。
夫の方が無精子症という事で妊娠が難しい中での不妊治療から断念に至るまでの夫婦の心理描写が丁寧に描かれ、そこから養子を取って我が子同然に愛情を注いで育てます。
そのかいあって、とても良い子に育った現在に、ある日突然現れる実母を名乗る女の出現。
そこからは生みの母となる蒔田彩珠の生い立ちストーリーへと変わっていきます。

まず、この構成がとても良いです。
栗原夫妻は残念ながら実子を授かる事を断念しながらも養子を引き取り、立派に育てていきます。
何の文句もありません。立派な人たちです。
そこに現れるのは、言ってみればチンピラ女のようなヤバい女。
何やら「ミステリー」と言う惹句も見えたこの映画のコピーから、養子の男の子を巡る犯罪系かと思いきや、そんな展開は無く、ひたすら「産みの親と育ての親」の人間ドラマで進みます。

この産みの親こと片倉ひかりの話に自分はすっかり感情移入してしまいました。
彼女はごく普通の純朴な中学生で、初めてのイケメンの彼氏も出来た。そりゃあ中学生でもチューくらいするでしょう。
そしてまだ初潮も迎えてないのに(劇中の台詞より)妊娠しちゃう。しかも、もう中絶可能な時期も過ぎてる。
結局、当別養子縁組をサポートする団体の施設のもとで出産し、子供は他の夫婦に引き取られていきます。
まあ、大人はこの子たちを非難する事もあるでしょう。実際、劇中でも親からは泣き、嘆かれ、隠れるように出産する羽目になります。
確かに大人から見れば軽率な行為だったかもしれないけど、ひかりちゃん自身はそんなに悪くはありません。

そして、この施設での描写もなかなか印象的です。
同じように「普通に出産できない後ろめたい事がある女性」という事で、ひかりちゃんと同室になる山下リオとか、恐らく今まで誰にも祝われた事が無いであろう誕生日にケーキをもらってハッピーバースデーを歌ってもらって涙する「まほちゃん」こと葉月ひとみのシーンも自分は無性に泣けてしまいました。

両親は極秘出産を「肺炎」と偽って学校を休ませ、出産後は高校受験に間に合うと、出産を「無かった事」にして日常に戻すのですが、本当にひかりちゃんの心に寄り添ってくれる存在は家庭にはもう無くなっていました。
直接的には描かれていませんが、結局高校にも行かず、家を出て施設に戻ったり(そこで働くために)しますが、その施設も閉められるという事でますます居場所が無くなります。
こうなると、いわゆる「転落人生」ですよね。
でも、根は真面目なひかりちゃんなので、風俗に落ちたりはせずに、住み込みで新聞配達のバイトで何とか暮らしている訳ですが、そこで知り合った女(こいつもどうしようもない転落女。演じた森田想が好演)の借金の保証人にでっちあげられ、ますます転落・・・。
そこで栗原夫妻に電話をかけ、前半の話に戻っていきます。

感情移入した栗原夫妻の前に現れたチンピラ娘に嫌悪感すら抱かせておいた後に同じシーンに戻ると、今度は完全にひかりちゃん側に情が移っちゃってます。
「あなたは誰ですか?」「あの片倉ひかりさんではありません」
ここでも彼女(片倉ひかり)は否定されます。
思えば、これまで否定されるばかりで承認欲求が満たされる事は無かった酷い人生です。
もう彼女は「嘘です。私は片倉ひかりでは無い」と自分自体を否定するしか無かった。
と、そこから先はネタバレになるので書きませんが、そんな片倉ひかりちゃんにも「希望」が見える結末になっており、救われた気分で映画を終える事ができます。

そんなわけで、何度も泣けました。何度も心に刺さりました。
その要因となるのが、何と言っても蒔田彩珠です。
先日観た「星の子」でも印象に残る芝居でしたが、この映画での「振れ幅」がとにかく凄い。
実際には高校生の彼女だが、中学生から20歳手前のチンピラ女まで実に違和感なく上手く演じており、もう「凄い。素晴らしい」の一言です。
一方の永作&井浦夫妻の芝居も素晴らしいです。
特にいつでも冷静に物事を見極め、子供を信じているお母さんである永作博美の芝居もまた素晴らしいです。
さすがにだいぶ老けてきたかなと思いつつ、それでも50歳には見えない童顔は健在で可愛らしいですよね。
そしてもう1人、養子縁組をサポートする「ベビーバトン」代表の浅田美代子の好演も見逃せません。
この人こそひかりちゃんが唯一心を許し、頼りにしている「母親」だったんだな・・と感じさせます。

上映時間は139分と若干長めですが、自分としてはあと10分足してでも「栗原夫妻の家を後にしたひかりを佐都子(永作)が見つけるまで」を描いて欲しかった(映画ではかなりアッサリとみつけてしまう)り、ひかりちゃんが借金返済していたが、あのお金はどこで調達したの?という疑問もあるにはありますが、まあそこは大した問題じゃないでしょう。

繰り返しになりますが、この映画での蒔田彩珠の芝居は必見です。
「三度目の殺人」では福山雅治の娘役、「友罪」では富田靖子の娘役(こちらも高校生で妊娠してしまう役)、「万引き家族」では松岡茉優の実妹役と、実は何度も目にしていて心には引っ掛かってた女優だが、この「朝が来る」で主役として立派に演じきって、もう忘れられない人になりました。

最後に、この映画のエンドロール後の「最後の5秒」(もう「監督・脚本 河瀬直美」の文字も消えて場内が明るくなろうかと言う寸前)に朝斗くんの「一言」が流れます。
「この台詞は要らない」という意見もチラホラ目にしますが、自分はこの台詞に救われた気持ちになったし、何よりもひかりちゃんが救われたと思う台詞でした。
例によって、この一言を聞かずして早々に劇場を後にするお客さんがたくさん居ましたが、実に勿体ないですよ・・・。
やっぱり映画は最後の最後までちゃんと観ましょうね。

◆パンフレット:850円

朝が来る

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